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| 「ボクの味て歩き」 | 行き付けの店たち(1) | 「がんこラーメン」(1) |
| 辻 真須彦 | 1986/04/05パンニュース | |
| 最近はチョットした「ラーメン・ブーム」だ。本屋に行けば,雑誌から単行本,豪華なカラーの大型版まで出ている。その上,テレビの「ラーメン大戦争」が評判を取ったし,伊丹十三氏の「タンポポ」はラーメンを映画の主役にしてしまった。 ボクが高校時代(昭和26年頃) ,ブラス・バンドの練習で遅くなると,きまって食べたラーメン屋。それが荻窪の「春木屋」であり「丸福」だった。今や,荻窪はラーメン狂の聖地であり,上記2店のラーメンは,ありがたい「御本尊」なのだ。 |
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| 先日も,ひさしぶりに「春木屋」へ寄ったら,同席の5人家族はすごい雨の中を,北千住から荻窪まで食いに来ているのだという。その時も「丸福」は風雨を突いて15人位は並んでいたと思う。ボクが好きなのは,勿論,昔馴染みの「春木屋」と「丸福」,それに新宿西口の「若月」,秋葉原の「松楽」となる。外国も含めれば,ロンドンのソーホーにある「麺」と書いてある店のワンタン麺が最高だ。 |
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| ところが,ここに素晴らしいラーメン屋が現れた。私の知る限り,未だどんなガイド・ブックにも紹介されていない。(このまま紹介されないことを願う!!)この店は,単に「美味い店」というよりも「非常な個性と主張を持った店」と言うべきであろう。ここを訪れた客は皆「驚き」を経験することになる。 その店は,高田馬場から歩いて10分,明治通りを新宿から北上して戸塚警察の先,高戸橋を左に曲がり,「新目白通り(13間通り)」に入ってすぐ左側だ。どうして,今回は詳しく場所を読者に教えるのかといえば,この店には一切の看板が,無い!! 「がんこラーメン」どころか「ラーメン」とも書いてない。勿論「赤提灯」もない。その上,店全体を真っ黒に塗り,窓ガラスは黒い紙が張られ,内部に居る客は,かろうじて見える足の数で判断しなくてはならない。 |
| 開店当時は,表に「がんこラーメン」と書いてあったので,ボクはそう呼んでいるのだが。開けて3ヶ月後には,もうそれを全部消してしまったのだ。しかし現在は,この看板のない店の前に,何時でも何人かの人が寒さにふるえながら,待っている。しかも,右隣もラーメン屋だ(何時もガラ空き)。ひどいことに,左隣のスナックが最近「ラーメン屋」に改装し,派手な赤提灯と「ラーメン」の看板を林立させているので,間違えてここに飛び込む人もいる?!。(パンニュースの読者は,ここまで書いておいたので,間違いなく行き着くことが出来るはずだ。) この,看板もなく,内部も見えない店の,黒いガラス戸を引き開けると,一列のカウンターに十人で満員の席がある。ここのオヤジがたった一人で仕事をしている。店内は禁煙,勿論ビールも酒もない。またラーメンとも「いくら」とも書いてない。そして,あるのはただ「ラーメン」だけ。(一杯500円は帰りに分かる) |
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| ある寒い夜,バイクのヘルメットをカウンターに乗せながら「ギョウザとラーメン」とやった若者は「悪いけど,隣の店に行ってね,うちはそうゆうのやってないから」と言われてしまった。「味噌ラーメン」などと言おうものなら「うちは会員制なので」と即座に追い返されてしまう。 ボクと晶子が,はじめてこの店に行った時「ラーメン」と頼んだら,イガクリ頭の三十五位の目のやさしい,チョビひげの主人は「チャーシュウは,油の多いのですか,少ないのですか」と聞く。ボクは迷わず「多いの」と答えると,彼はニコッと笑い「それでいいのです」と大きくうなずいた。勿論一回で「がんこ」と印した会員証が貰えた。 |
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| 店内には「この店は,会員の方と,そのお知り合いの方に限らせていただきます。『昔は良かったのになぁ』とならないように。」と書いてあった。--続く-- | ||