ホッピーを飲む辻バード、
そして焼鳥を焼くオカヨさん
撮影:伊万里

ボクの味て歩き 焼鳥学入門(別冊) 「おかよ」さん
辻 真須彦 2001/12/09
 焼鳥といえば、最近は新井薬師駅の近くにある「おかよ」さんへ行くことが多い。実は昔、ここの壁一つ隔てた隣に、蕎麦屋の「松扇」があって、ボクらはよく、まずこの「おかよ」で焼鳥を4本くらいツマんでから、蕎麦を食いに行ったものだ。

 この近辺でも焼鳥屋は多い。煙をモウモウと立てて景気良く焼いていて、すごく流行っている店もある。いつも若者やサラリーマンで満員だ。しかし、ボクも伊万里も、ここで食べたら「オヤっ」というほど味が悪いので顔を見合わせた。みんな味が分からないのかしら?

 そこへ行くと、この「おかよ」のは立派である。ボクらが「ナンコツ」と「タンモト」とか頼むと、肉の塊を冷蔵庫から出してきて、一生懸命にサバいてくれて串挿しし、そうして焼く。「ささもと」とか「やっちゃん」には数等及ばないが、ボクの「焼鳥学」からすると素晴らしくセオリーに合っている。


 ボクらは、いつも「おかよ」ではまず「ナンコツ」と「タンモト」を頼む。そして、「ハツ」とか「シロタレ」を頼んだりする。おかよさんは、丁寧に一つづつ焼いてくれるから嬉しくなってしまう。

 ボクは、いつもここでは「ホッピー」を飲む。これは「失業者のビール」とボクが命名しているのだが、焼酎をノンアルコールビールで割ったようなものだ。これがまた焼鳥に良く合うのだ。いや、この店にこそホッピーがよく合うのである。

 大体「おかよ」には人が6人くらいしか入れない。7〜8人じゃギュウギュウの寿司詰めになる、そして、ここの客は独特である。ほとんどが一人で来る中老年の男で、あまり仕事もしていないような感じなのだ。ボクもそうだけど。

 「おかよ」の店の前に立ったら、まず普通の人なら、その佇まいに尻込みしてしまうだろう。いかにも、失業者の溜まり場という感じだから。

 でもボクは、どうもこんな感じの店がすきなのだ。サラリーマンが威勢良く仕事の話で盛り上がっているなんて言う店が嫌いなのだ。ヒッソリと裏ぶれた感じで、生活に疲れたような男がたむろするような店が好きなのだ。

 そこで焼鳥を食い、ホッピーを飲む。そして、その焼鳥(トントリ)がまともである。その上安い。

 ボクらは今も「おかよ」で焼鳥を喰ってから、少し離れたところへ引っ越した、蕎麦屋の「松扇」へ行く。ここ最近は凄く流行っていて、景気の良いサラリーマンや女性でイッパイだ。

 「松扇」の高橋さんが良くボクに言うのだが「辻さんみたいに、オカヨさんの店とウチと両方へ行く人はあまりいないと思いますよ」つまり、この2つの店の両方を許容する人は少ないのである。じゃあ、オカヨの客はどう言うか。「あんな蕎麦みたいなものに2千円も3千円も払うヤツの気が知れない」

 ボクに言わせれば、両方の店ともにマトモである。ボクの家の近くには、まだまだこんな店があるから楽しくなってしまう。     辻バード