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| 西さんとの想い出 2003/01/16 from BBS談話室より
| 辻 真須彦 |
1  みなさん!!!

 ボクにとって、凄く悲しいことがありました。

 ボクの長年の友人である、西良三郎さんが一昨日亡くなりました。
享年85才、心不全ということです。昨年は、長年一緒に生き、愛して
きたオクサマの民世さん(80才)が亡くなり、西さんも途端に元気が無
くなり、寂しく1人で生活をしていました。

 西さんは、画家でもあり、ピアニストでもあり、素晴らしい教養人
だったのです。ボクが西さんと知り合ったのは、高校を卒業する頃
なのです。ボクが、初めてプロのバンドに加わってアルトサックスを
吹いた時のピアニストが、この西さんだったのです。大学に入る前で
すから、これは、もう50年以上のお付き合いとなります。

 この西良三郎氏には、いくつかの大きな想い出があります。特に、
今から6-7年ほど前、西氏が突然ボクのところへ電話を寄越し、
「辻くん!! 」「一緒にパリへ行ってくれないか?」と言うのです。
ボクは「どうしてなのですか?」と訊くと彼は「今、パリでセザンヌ
の大回顧展をやっているのだが、これをぜひ見に行きたいのだ」と
言うのです。ボクは、即座にOKと言い、全ての準備を整えて上げて
2人だけで出発しました。(帰国まで2人だけの旅でした)


2  西さんが着いたばかりの、冬のパリには、細かい雪が降っていました。
彼はナシオンの広場で、こう叫びました。「ああ、ボクは、パリにいる
んだ。なんて幸せなんだ。どうだ、この景色の素晴らしさ」「何という
この雪の美しさ!! 」西さんは、ことあるごとに、このパリの街で、素直
な感動を現し続けていました。

 キャフェに座っていた時、やはり粉雪が舞っていました。「おう!!
これはまさにユトリロだ!! 」彼は叫びました。イルドフランスの大地
では「おおっ、これがクールベの土の色だ」「あれは、正にコローの描
いた林じゃないかー」とか、まるで子供のような叫びを発していました。

 目的だった「セザンヌの大回顧展」(グラン・パレ)には3回も通い
ました。世界中から集まってきたセザンヌの作品の前で、西さんは、
もう一つ一つを食い入るように、丹念に丹念にみていました。今でも
その様子がボクの目に浮かびます。こんな風に、想い出は尽きません。


 もう、これからの日本では、この西良三郎氏のような人物は存在し
ないでしょう。ヨーロッパ文化に憧れ、そして、深いヨーロッパ的な
教養を身につけている。専門の絵画はもちろん、音楽についても深い
深い造詣を持っていましたし、歴史や哲学についても、独特の世界観
を持っていた方です。

 そして、ヨーロッパへは、ただの一回(この時)しか行ったことが
ない。そして、その一回の体験を、深く深く見つめて生きていました。

 今日ボクは西さんの出棺に立ち会いますが、後日、西良三郎氏の
「お別れ会」が盛大に開かれる予定です。その時には、西さんが、
深く深く愛した、ベートーベンやブルックナーの音楽が鳴り響くこ
とでしょう。出来れば、彼自身が弾くベートーベンを、ボクはこの
時、聴いてみたい。しかし、今日は、親戚の方だけの、寂しい旅立
ちになります。

 以下の場所に、この西良三郎氏の写真がありますので、ご覧くだ
さい。合掌。             辻バード

      http://tsujib.com/010429Nishi.htm